世界中で新型コロナウィルスの感染防止対策が進められています。ホテルや旅館、飲食店、観光施設でも対策が進められているとともに、その基本となるガイドラインも都道府県や市町村、また業界団体から公表されています。
今回、宿泊施設や飲食店の方が新型コロナウィルスの感染防止策をご自身の施設で進めるに際して、ぜひぜひ、一度は目を通していただきたいマニュアル(行動指針)がありますので、ここに記事の形で紹介させていただきました。
記事にしたのには訳があります
記事にしたのには訳があります。
一つ目は、各自治体や各業界団体によるガイドラインをいくつか見た時に、その読み方によっては「窓を開けて換気」「テーブルを消毒」すればいい…というような読み方もできてしまう…という不安です。もちろん、換気も消毒も必要なのですが、「なぜそれをしないといけないのか」「しないとどのような危険性があるのか」また、換気・消毒する時に「スタッフや施設にどのような危険性が及ぶのか」というような共有すべき基本的知識なしに、「こまめに換気しましょう!」という言葉だけが伝えられてしまう危険性を感じました。
同時にこれは、二つ目につながります。
二つ目は、宿泊施設・飲食店は、外部からウィルスが持ち込まれる可能性、または「感染のハブ」になる可能性が高い場所であるということです。地域外各所から人が訪れるところですから当然です。(もちろん、宿泊施設・飲食店以外も同じような性格の場所はたくさんあります)
ということは、宿泊施設・飲食店での感染防止対策は、
- お客様を守る
- 自分を守る
- 自分の家族を守る
- スタッフを守る
- スタッフの家族を守る
- 地域を守る
という、6つの大きな使命を負ったものである必要があります。
各自治体や業界団体のガイドラインが悪いのではありません。
簡潔にわかりやすく、手早く行動に移せるように、要素を抜き出してコンパクトにまとめられています。これはとても価値があることです。
ですが、一度は、
- 新型コロナウィルスの特徴と最新の知見
→ それによってどう対策すべきかがわかります - 消毒をするという行為の意味
→ 後で書くように「えっ!そうなの!?」ということもあります - スタッフがどのレベルで感染対策を意識すべきなのか
→ 対策の行為が、事業継続や、家族・地域を守るということに直結している
ということを踏まえ、その上で各自治体や業界団体のガイドラインベースに実施に移るというのがいいのではないかと思いました。
私が一度は目を通していただきたいマニュアル(行動指針)と言っているのは、「サクラクオリティ」というところが公開している「サクラクオリティ安全行動基準(感染症対策実践マニュアル)」です。
「サクラクオリティ」(観光品質認証)とは、「宿泊施設の品質を認証」する国内初の事業で、世界中の旅行者に、質の高い日本のサービスに関する情報提供を行い、安心で快適な旅行を楽しんで頂くための仕組みです。詳しくは、こちらのブログ記事で紹介していますのでお時間がある時にご覧ください。
「なるほど!」「やっぱりそうだよね…」がいっぱい
76ページとかなりのボリュームですが、宿泊施設の方・飲食店の方にぜひ一度、(ザッとでもいいので)目を通してみてください。
きっと、新型コロナウィルス感染対策に対する意識と考え方が変わるのではないかと思います。
(もちろん、宿泊施設・飲食店以外の方でもとても参考になります)
例えば、私はこのようなところを「なるほど~」と拝見しました。
- 新型コロナウィルスの不活性化までの時間は、加工木材や布地は2日間、ガラスや紙幣は4日間、ステンレスやプラスチックの表面では7日間
- 換気は必要だが、セントラル空調の場合、ダクトを通じてクラスターを発生させる可能性がある
- クレジットカードを触ったら都度指先の消毒
(自治体などでは、現金を使わないで済むようにキャッシュレスを導入…とだけ書かれていますが、対策としてはそうではない) - ビニールによるパーティションを設置する際にはビニール素材の可燃性に注意。天井から設置する場合には火災関連設備との兼ね合い注意。
- ゴム手袋をしても、都度消毒しない場合はゴム手袋着用の意味がない。
- 調味料類をテーブルに常設しない。
(常設して、しかもお客様ごとに都度消毒しないお店が広くあるのではないかと想像します) - 消毒剤に関する知識と、具体的な消毒の方法
(消毒後、ウィルスの不活性化までは少し時間がかかる) - 温泉施設での消毒剤の利用は化学反応による有毒ガスの発生の懸念アリ
- 靴の裏面にウィルスが付着している可能性が高い
- 消毒剤の直接スプレーは、ウィルスを飛ばしまき散らす可能性がある
- 従業員スペース(バックスペース)の感染予防対策
- 世界の新型コロナウィルスに関する最新の情報
また、このマニュアルの中でも、他で公開されているガイドラインにおける問題事例や課題も取り上げられています。
いくつか抜粋しますと…
- 感染症拡大防止に対する意識レベルに差異が見られる 。
- 意識を変える必要があること、それが最も重要であることが現場に伝わっていない。
- 消毒薬知識レベル、消毒手順が不正確である 。
- 宿泊施設毎でガイドランの受け取り方に格差がある 。
- スタッフの日々の行動自粛の指針が不明瞭であることから、スタッフに罹患者が生じるケースが見られる 。
- バックヤードの自衛策がやや不足している。
- スタッフが濃厚接触者にならないことの重要性が認識されていない 。
- なぜレストランでビニール手袋をする必要があるのか、なぜアクリル板を設置する必要があるのか、その「理由」が十分に理解できていないことから手袋を交換せず且つ消毒しない状況で、逆に接触感染の危険が認められる。
私が最初に書いたことと似たようなことが書かれています。
このサクラクオリティのマニュアルは、非常に厳しいものです。ですからすべての宿泊施設や飲食店が導入できるものではないことはもちろん承知しています。
また、実際の感染対策は各自治体や業界団体のガイドラインを参考にしながら、施設ごとに個別に進めていけばいいと思います。
ですが、このサクラクオリティの「感染症対策実践マニュアル」に書かれていることを理解した上で、費用・施設・スタッフの都合で「やらない(できない)」というのと、そもそもこれらのことを「知らずにやらないでいる」というのでは、まったく意味が違うことになるのではないかと思います。
読むのも大変なボリュームではありますが、宿泊施設・飲食店の方にはぜひ一度目を通してみることをおすすめします。