「観光地域づくり」とは「日本版DMO」とは

「観光地域づくり」とは「日本版DMO」とは

このブログは、「八ヶ岳観光圏」に所属する新人「観光地域づくりマネージャー」の活動の様子を掲載したり、活動を通して感じたこと考えたこと(そしてたまには宣伝♪)を掲載しているサイトです。

 

少しだけ、「観光圏」「日本版DMO」「観光地域づくりマネージャー」についてご説明しますね。

 

観光圏とは?

 

「観光圏」は、(1)市町村という行政活動のエリアを超えて、また(2)行政と民間という枠を超えて、さらには(3)既存団体の枠を超えて、一つの共通した観光エリアとして「国際競争力の高い魅力ある観光地域づくり」を目指していこう、というものです。

 

皆さんが観光旅行に行った時にはそうだと思いますが、「自分が今どの町にいるのか」なんて全然意識していません。あくまでも、富士山や金毘羅さんや羊蹄山に来ているのであって、その場所の市町村名は知らないことがほとんど。もっと言えば、そこが何町なのかなんて気にもしません…。
ですが、これが観光情報を発信したりするようになると、行政区単位だったり、行政区の中にある観光協会単位になってしまうということがあります。

そうではなくて、観光にいらっしゃるお客さん目線になって、観光エリアとして「地域が連携」して観光地経営をしていこう!というのが観光圏です。八ヶ岳観光圏で言えば、市町村や県境を越えて「八ヶ岳エリア」ということで一つの観光エリアを作っていくということです。

 

観光地域づくり とは?

 

観光圏には、もう一つ大きなポイントがあります。
それは、「観光地づくり」ではなくて、「観光地域づくり」だということです。

少し難しい表現ですが、「観光地域づくり」とは「観光による地域づくり」のこと。

 

地域の人口減少・高齢化などによって、休耕田が増えたり商店街のにぎわいがなくなったり、バス路線が廃止されてしまったりなどなど、現在、地域にはさまざまな課題が突きつけられています。これらの課題に対して観光という切り口を利用することで、例えば、地域の旅館に地元野菜を提供するような取り組みによって休耕田を減らすことにつながったり、地域の課題が解決され住みやすい場所にしていくこともできるかもしれません。このように、地域の課題を「観光」によって解決していこうという試みが「観光による地域づくり」、つまり「観光地域づくり」ということです。

 

とはいえ、単に観光客が増えさえすればいいわけでもありません。

いくらその地に観光客を呼ぶと言っても、大きな観光施設をドカンッ!と誘致したり、タレントを使って大々的にプロモーションするだけでは、そこに住んでいる地域の方々の「誇りや想い」とは全くかけ離れたものになってしまう可能性があります。

また、その地に宿を営む人からすると、その宿の周辺に魅力的な観光スポットがあったり、魅力的なお店があったり、魅力的な地元食材があったり、歴史・文化・風習を体験する魅力的な施設があったりするからこそ、宿に泊まられたお客様に喜んでいただけるようになります。このように考えると、「地域が元気」だからこそ、「地域の魅力を発掘・保存・伝承・表現してくれている人がいる」からこそ、そこが魅力的な観光地域として成り立つと言えます。

そう考えると、観光地域づくりは一方で「観光による地域の課題解決」を目指す、つまり「観光が地域の課題解決に貢献する」というものでありながら、他方で、その「観光」すらも、「誇り」や「魅力」といっだ地域の資源や人によって支えられている、という構造になっているということですね♪
(観光→地域 であり、地域→観光 でもある) 

 

さらに、「観光」にも2つのポイントがあります。

一つは、国内人口が減少するということはこれまでのような「一見さん観光」に頼るわけにはいかない…ということです。人口増の時は一見さんだけを相手していれば次から次へと新規の方がいらしたのですが、人口減の今はそうはいきません。来ていただき、魅力を感じていただき、リピートしていただき、その地のファンになっていただく。そういう観光スタイルにしていく必要があります。

もう一つは、(一つ目と関係しますが)従来型のスポットを見るだけの観光から、地域の方々や生活・文化に触れる「体験型の観光」への変更です。施設を見るだけなら1回でいいでしょうが、体験は毎回違う感動がありますし、どんどん深くその地域の魅力を知ることになりますので。そして今、全国各地で、さまざまな体験やアクティビティができるサービスが増えています。

この2つポイントからも「地域」がキーワードとして浮かび上がってきますね。

 

さて、難しい表現になってしまいましたがまとめますと、観光と言っても、単に観光客が増えればいいというわけではなく、観光によって地域に住んでいる人が幸せにならないといけない、ということです。

これを「観光圏」では、「住んで良し、訪れて良し」と表現しています。

住んでいる人も幸せ、その地に訪れる人(観光客)も幸せ、そして住んでいる人がそのことを誇りに思う、そういうところを目指そう!ということです。

 

観光圏のさらに詳しい情報は、観光庁のホームページに掲載されています。
(全国13観光圏の紹介もありります)

観光地域づくり(観光庁ホームページ)

 

 

観光地域づくりマネージャー とは?

 

観光地域づくりを進めていく中で、地域に観光に来ていただく体制を整え、来ていただけるような魅力を発信していく必要があります。
とはいえ、「観光地域」という一つのエリアを考える時、その範囲は行政の枠組みを越えます。市町村だけでなく、県境すらも越えていきます。

(八ヶ岳観光圏も、山梨県・長野県という県境をまたぎ、北杜市・原村・富士見町という市町村の枠を越えています)

さらに、そのエリアの中にある観光事業者の団体、飲食店の団体、宿泊施設の団体、商工の団体、行政の団体などなど、観光とその背後(背後というのは、交通であったり農業であったりということです)にある色々な団体が集まってその地域の観光について考え、方針を決定し、予算組みをし、事業をマネジメントをしていかなくてはなりません。

 

つまり、(現在の)地域における観光マネジメントにおいては、行政の枠を超えて、官民の枠を超えて、団体の枠を超えて「観光地経営」が必要、ということです。

そうした時、地域の関係者(ステークホルダー)の賛同の基、中核となる組織が機能すれば、意見を集約し取りまとめ、事業計画を立案し、実行していく、そうすることが可能になります。言ってみれば「地域から信頼された旗振り役」です。

(実はこの「賛同」がとっても大切だと思います。)

そのため、観光圏整備法でも、観光地域づくりの中核となる組織「観光地域づくりプラットフォーム」の設立を求めています。

八ヶ岳観光圏では、一般社団法人 八ヶ岳ツーリズムマネジメント がそれにあたります。

 

さらに、その組織の中で中核となってマネジメントする人材が必要になります。意見を集約して、事業を実施していく人ですね。
その人材のうち、観光庁が実施する研修を受講・修了した人のことを「観光地域づくりマネージャー」と言います。

※ちなみに、研修は本当にハードでビックリです…(^_^;。
 座って聞いているだけじゃなくて、それはもう...。
 夜遅くまで同期の皆さんと課題に取り組みました。

 

ということで、やっと観光地域づくりマネージャーまでたどり着きました...

観光地域づくり人材育成について(観光庁ホームページ)

 

日本版DMO とは

 

ここで少し横道にそれて、「日本版DMO」ということを紹介しないといけません。

国(観光庁)は、これまで「観光圏」という取り組みを10年間続けてきましたが、この枠組みを今度は「日本版DMO」という枠組みにしつらえ直すことになりました。

DMO というのは、「Destination Management Organization」(デスティネーション・マネージメント・オーガニゼーション)の略で、地域と共同で観光地づくりと運営を行う法人(団体)のことを言います。海外ではこのような(民間をベースにした)法人による観光地運営がなされている地域があります。その枠組みを日本でも導入して、観光地を経営していこうというのが「日本版DMO」という枠組みです。

ですが、よくよく考えるとこの「日本版DMO」の目指すところは、先ほどまで紹介してきた観光圏と同じです。
ではなぜわざわざ新しい枠組みになったのかというと、詳しいことは省略しますが、そこは観光庁と政府との力関係?のような…モゴモゴ…。

いずれにしても、ひとまずは、観光圏と日本版DMOとはほぼ同じものだとご理解いただいてかまいません。

 

 

私も参加させていただている 一般社団法人 八ヶ岳ツーリズムマネジメント は、平成29年11月に日本版DMO法人に登録され、日本版DMO法人として活動していくことになっております。

 

一つだけ、枠組みが「観光圏」から「日本版DMO」に変わったことで、国の方針に新たに加わったことがあります。
それは「外国人旅行者」というキーワードです。

 

観光圏・日本版DMOでは、「世界に通用するブランド観光地」を目指しています。
国内人口が減少する現状の中で、海外からいらしていただけるような観光地にしていこう、そして、海外のブランド観光地のように、飛行機とホテルの予約だけで遊びにいらしても、アクティビティやガイドの手配、食の案内など、この地域の魅力を思う存分体験していただけるようなワンストップサービスが提供できるようにしていこう、そういう高い目標と志を持って活動しています。

 

先ほど、観光には2つのポイントがあることを紹介しました。
この 「日本版DMO」という枠組みが登場するのと前後して、と言いますか、そもそも日本版DMOという枠組みで組み直す必要性の背景として、観光における3つ目のポイントがあります。

それが「訪日外国人旅行者」です。

国内の人口は減少することが確定していますから、どんなに国内旅行を活性化させたとしても総量が減少することは決まっています。
ですからその分、これまで日本がほとんど目を向けてこなかった「外国の方に日本に観光に来ていただく」ことが必要になります。

そればかりではなく、(と言いますかむしろこちらが本命なのですが)国内の人口が減少するということは、国内の日常的な消費額がどんどん減っていくことを意味します。人口が減少すれば、その分、飲食店も洋服屋さんも売り上げが落ちていくのは明らか。(ある程度の経済発展を遂げた国の景気は人口の規模に左右されるわけですので…)

その国内の消費額を補うために期待されているのが、訪日外国人旅行者による日本国内での消費です。
少子高齢化・人口減少という流れの中で、国をあげて「観光立国」という旗を揚げたのはそのためです。

観光庁の資料には、次のように紹介されています。

定住人口1人当たりの年間消費額(125万円)は、旅行者の消費に換算すると外国人旅行者8人分、国内旅行者(宿泊)25人分、国内旅行者(日帰り)80人分にあたる。

 

このようなわけで、現在のように「観光地域づくり」と「訪日外国人旅行者」というものがつながってくるのです。

 

  • 観光地域づくり
  • 日本版DMO
  • 訪日外国人旅行客

という、現在の日本での観光における3つのキーワードの関係、ご理解いただけましたでしょうか?

 

どうしてこのサイト?

 

やっとこの話になります…(^_^;。

ここまでお話ししてきましたように、" 地域の「稼ぐ力」を引き出すとともに地域への誇りと愛着を醸成する「観光地経営」の視点に立った観光地域づくり" (観光庁の表現) をお手伝いさせていただくようになったわけですが、新人・観光地域づくりマネージャーをさせていただきながら、活動の様子や感じたことなどを紹介していきたいというのがこのサイトです。

 

そう考えた動機は大きく2つです。

 

一つ目は、この業界内にいると(という表現でいいのか…(^_^;)何がどう動いているのかは比較的見えやすいのですが、一歩そこから出てしまうと、活動や活動のベースとなっている考え方などなど見えないことがたくさんでてきます。地域の住民の方も含めて、多くの方は「成果・成果物」を新聞やパンフレットで知ることはあるのですが、そのアウトプットの裏側や土台になっている「地域づくり」の考え方などを知っていただけるような場があったらいいなぁ…ということです。そこまで崇高でなくても、活動の記録として紹介できるところは紹介したいなぁ…という想いです。

この八ヶ岳観光圏も、先輩のマネージャーさんや地域の関係者の皆さんがもう10年にも渡ってここまで形を作ってこられました。
新人の私は、先輩の方々が積み上げてくださったものの上にチョコンと参加させていただいたにすぎません。
せめてできることと言えば、先輩の皆さんが形づくってきたものがどんな形をしていて、その背景にはどんな想いがあるのかを、何かの形で表現していくことしかないなぁ…と。

八ヶ岳観光圏では「 八ヶ岳ツーリズムマネジメント」のサイトがあり、そこで「地域づくりプラットフォーム」としての活動の様子を紹介しています。そういう意味では、このサイトはその個人版になるのかと思います。


【ご注意】
 このサイトは(八ヶ岳観光圏としてではなく)私個人の想いや見解を掲載しています。

 

もう一つは、「日本版DMO」に対する取り組みとの関係で、もう少し「地域」に軸足を置いた形を表現してみたいなぁ…という思いです。

こんな感じです。


ある地方がその地方でありえるのは、その地にずっとある独特な「想い・誇り・習慣・様式」があるからこそです。
そこに住んでいる地方の私たちは、言ってみれば、「その地域にたまたま住んでいる」というよりも「その地域を背負って住んでいる」ようなもの。だからこそ、地域のお祭りに愛着を感じたり、地域や地区のための活動に参加したり、地域の課題や将来を考えているのだと思います。


一方で、私たちは資本主義経済という中で日々「経済」と戦っているというもう一つの側面があります。
この経済活動は、地域を背負わない方が戦いやすいですし、経済の発展(経済の合理性)は地域という固有の枠組みを超えて行ってしまうという特徴があります。実際、私たちも、地元に古くからあるお店ではなく、世界中どこにでもあるコンビニで買い物をするわけですから。

 

観光はまさに、この経済活動の中で営まれます。でも「地方の資源」が経済活動の中に取り込まれた瞬間に、地方が地方であり続けてきた「想い・誇り・習慣・様式」がぶっ飛んでしまったところで表現されてしまう(ないがしろにされてしまう)ことに違和感を感じてしまうことが時々あります。(悪人のような言い方をすると、「それって "東京" "大企業" が儲けるために地方を利用しているだけじゃない?」というような。)

観光は、地域に接しているからこそ観光であるはずなのに、経済活動として地域を無視して離陸してしまう可能性を大いにはらんでいる、そういう怖さがあるのも事実です。

 

でも、この観光であったとしても、他の地域活性化であっても、地方は、この経済活動を通してしか道を拓けないことも確かです。
だとしたら、地方が「地方であること」を持ち続けながら、どうやって経済と戦っていけばいいんだろう。ということです。

 

このような2つの動機から、少しでも情報を掲載していければと思っています。 

色々と書いてしまいましたが、時々サイトにアクセスいただき、応援していただけましたらうれしいです♪

  

Check! Web